1949年、トリノ。カルロ・アバルト(Carlo Abarth)という、オーストリア出身の元レーシングドライバーが、ひとつの工房を立ち上げた。彼の誕生日は11月15日、蠍座(さそり座)。だから、ロゴはサソリ。「小さくても、一刺しで仕留める」 ― その意志を、エンブレムに刻んだ。
それから75年。アバルトは「Small but Mighty(小さくとも、力強く)」という哲学を、一度も曲げたことがない。フィアット500やパンダの小さなボディに、レーシングカー級の心臓を詰め込み、世界中のスポーツカー愛好家を魅了し続けている。
なぜサソリのエンブレムは、これほど世界に愛されるのか。75年の物語を、紐解いていこう。
小さなサソリが、
世界を魅了する。
1949年、カルロ・アバルトがトリノで創設したスポーツカー・チューニングメーカー。1971年フィアット傘下に入り、500や695、124 Spider、そして現代の500e EVまで、小さな車体に大きな速さを宿す独自のポジションを築き続けている。「Small but Mighty」のスピリットは、75年経った今も色褪せない。
※フィアット500との関係や歴史は、「フィアット、120年の物語」もご参照ください。
カルロ・アバルト、サソリの父。
アバルトの物語は、ひとりの男の人生から始まる。カルロ・アバルト(1908-1979)。オーストリア・ウィーン生まれ、若き頃はモーターサイクルレーサーとして活躍した。1927年、わずか19歳で欧州モーターサイクル選手権のチャンピオンに輝いた、生まれながらのスピード狂だった。
第二次世界大戦後、彼はイタリアへ移住。1949年、トリノで自身のレーシングカー製造会社「Carlo Abarth & C.」を設立した。当時のイタリアでは戦後復興期で、人々が手に入れられるのは小さく安価な車だけ。カルロはそれを「速くして、楽しくする」ことに人生を捧げた。
エンブレムはサソリ(Scorpione)。これは彼の星座(11月15日生まれ=さそり座)に由来する。「サソリは小さくても、一刺しで命を奪える」 ― 小さなフィアットのエンジンに、毒針のような速さを宿すアバルトの哲学を完璧に表現したシンボルだ。
ヴィンテージ・アバルト、伝説の始まり。

1960年代のAbarth 595 ― フィアット500を高性能化した伝説の小型スポーツ。
アバルトの最高傑作は、間違いなく1963年デビューのAbarth 595。フィアット500(Nuova 500)をベースに、エンジンを27.5PS(標準13PS)に大幅強化、専用サスペンション、ブレーキ、エアロパーツを装備したコンパクト・スポーツ・ハッチだ。
この小さな車が、当時のサーキットでとんでもない番狂わせを起こした。「ジャイアントキラー」と呼ばれ、ポルシェやアルファロメオ、ランチアの倍以上の排気量を持つ車を抜き去るシーンが、欧州のラリー・サーキットで繰り返された。アバルトの真髄は「小さな車で、大きな車に勝つこと」だった。
1971年、フィアット社はアバルトを買収。以降アバルトは「フィアットのスポーツ部門」として位置づけられ、ラリーやレース活動のすべてを担当することになる。1970-80年代のフィアット車のすべての高性能版にアバルトの名前が刻まれ、サソリのエンブレムは「速いフィアット」の証となっていく。
現代版、Abarth 595と695。
2007年に現代版フィアット500がデビュー。それを受けて2008年、現代版Abarth 500(後の595)が登場した。クラシック595のスピリットを継承しつつ、現代の安全基準・走行性能・電子制御を満たした、新しい時代のホット・ハッチ。
Abarth 595(標準モデル)
1.4Lターボエンジン、最高出力145〜180PS。複数のグレード展開があり、通勤用途から週末のサーキット走行まで対応する。0-100km/h加速7.3秒前後、最高速度210km/hという、コンパクトカーとは思えない走行性能を実現している。
Abarth 695(最高峰)

Abarth 695 ― Sabelt製レーシングシート、Brembo製ブレーキ、本格スポーツ仕様。
180〜193PSの最高峰モデル。差別化要素は装備の充実度にある:
- シート:Sabelt製レーシングバケットシート
- ブレーキ:Brembo製4ポット赤キャリパー
- 排気:Record Monza製ダブルバルブ排気(爆音モード)
- ホイール:17インチ専用OZ Racingアロイ
- サスペンション:Koni FSD周波数応答式ダンパー
- 限定車:Tributo Ferrariなど、フェラーリ仕様の特別エディション
「Tributo Ferrari」はフェラーリ・カリフォルニアからインスパイアされた限定モデル。フェラーリと同じ「Rosso Corsa(コルサ・レッド)」、フェラーリ同色のレザーインテリア、Tributoストライプを装備した、コレクターズ・アイテムとして人気を博した。
Abarth 124 Spider ― 屋根を開けたサソリ。

Abarth 124 Spider ― マツダ・ロードスターをベースにイタリアン・スポーツに昇華。
2016年デビューのAbarth 124 Spiderは、現代のアバルト最大の話題作だった。ベースは、なんとマツダ・ロードスター(ND型)。フィアットとマツダが共同開発した「フィアット124スパイダー」のアバルトチューニング版という、異色の経歴を持つオープンカーだ。
スペック
- エンジン:1.4Lターボ、最高出力170PS(ロードスターは1.5L NA 132PS)
- トランスミッション:6速MT(一部地域で6速AT)
- サスペンション:Bilstein製専用ダンパー
- ブレーキ:Brembo製4ポット赤キャリパー
- シート:Recaro製スポーツシート
- ボディ:マットブラックのボンネット+ボディ同色(ヘリテージ仕様)
- 排気:Record Monza製ダブルバルブ
マツダ・ロードスターの「軽量・コンパクト・FR」というスポーツカー黄金律を継承しつつ、イタリアン・パッショネートを加えたAbarth 124 Spider。0-100km/h加速6.8秒、最高速度230km/h。日本では2017年に発売されすぐに完売、中古市場でもプレミアがついた。生産期間は短く2019年に終了したため、現在は希少な存在になっている。
「日本で日本のロードスターを基にしたイタリアン・スポーツが、日本で売れる」という、複雑な経緯を持つ車。だが、それゆえに「日伊融合の傑作」として、自動車史に独自のポジションを築いた。
Abarth 500e ― 電気時代の挑戦。

Abarth 500e ― EVになっても「アバルトらしさ」を失わない、ライムグリーンの新世代モデル。
2023年、アバルトは大きな決断をした。「アバルト初の完全EV」として、Abarth 500eを発売したのだ。アバルトファンは賛否両論だった。「EVのアバルトなんて、ありえない。あの排気音こそアバルトだ」と批判する声も多かった。
それに対するアバルトの回答は、「Sound Generator」という独自技術。EV車には本来エンジン音はないが、アバルト500eは外部スピーカーから、本物そっくりのスポーティなV型エンジン音を再生する。サーキット走行時、トンネル内の轟音、低速時の静粛性 ― すべてのシーンで、アバルトらしい走行音を電子的に演出する。
スペック
- バッテリー:42kWh
- 航続距離:260km
- 最高出力:154PS、最大トルク235Nm
- 0-100km/h:7.0秒
- 最高速:155km/h
- 充電:急速85kW、5分で40km分追加
- 音響:Sound Generator(V型音声再生)
「電気でも、アバルトはアバルト」 ― これがアバルトの新しい時代の挑戦。排気音への愛情を、電子的に表現することで継承するという、ユニークなアプローチが、世界の自動車業界から注目を集めている。
「Small but Mighty」の真意。

Abarth 124 Spider ― サーキットでこそ、本領を発揮する。
アバルトが75年もファンを魅了し続けるのは、なぜか。それは「Small but Mighty(小さくとも、力強く)」という哲学を、一度も曲げなかったからだ。
理由①:誰でもアクセスできる「速さ」
フェラーリやランボルギーニのスーパーカーは、見るだけで終わる人がほとんど。だがアバルトは「20-30代の若者でも頑張れば手が届く」価格帯。Abarth 595 なら新車400万円台、中古なら200万円台。「速い車を、一般の人にも所有できるようにする」のが、アバルトの存在意義だ。
理由②:日常から非日常まで対応
アバルト595は、普段の通勤・買い物にも普通に使えるのに、週末はサーキットで本気の走りができる。「2台持つほどお金はないけど、走りも楽しみたい」という、現実的なオーナーのニーズに完璧に応える。「1台2役の天才」が、アバルトの隠された魅力だ。
理由③:サウンド ― 「聴いて楽しい」
アバルトの最大の特徴は、排気音。Record Monza製ダブルバルブ排気は、低速時は普通の排気音、回転数が上がるとバルブが開いて爆音モードになる。「街中では静かに、走ると吠える」。トンネルや峠でアクセルを踏むたびに、官能的なサウンドが響く。EV版500eのSound Generatorも、この「音への愛情」の延長線上にある。
理由④:個性とイタリアらしさ
サソリのエンブレム、独特のストライプ、Sabelt・Brembo・Bilsteinなどイタリア/欧州の名門部品メーカー。「自分は普通じゃない」を表現したい人にとって、アバルトは最高の選択肢。「個性の塊」のような車だ。
理由⑤:ファンコミュニティの強さ
日本国内にもAbarth Owner's Clubなどの愛好家団体が多く、ミーティングやサーキット走行会が定期開催される。アバルトを買うことは、「同じスピリットを持つ仲間に出会う」体験でもある。25万人以上のフォロワーを持つ「Abarth Italia」公式SNSも、世界中のオーナーを繋ぐコミュニティになっている。
大きさじゃない、馬力でもない。
「小さくても、力強く」が、アバルトの全てだ。
小さなボディに猛烈な走行性能を秘めたアバルトの内装を、シートカバーでさらに自分らしく仕立ててみませんか。
イタリアン・ラグジュアリーを求めるならSandii GALETTE(ヴィーガンレザレット、11色)。
ヴィンテージ・スポーティ感にはRefinad ヘリテージメッシュ(本革風、3色)。
個性派ネイティブ柄ならSandii KACHINA(6色)。
Abarth 595/695から124 Spiderまで、車種別の専用設計でフィット感も◎。
アバルトを選ぶことは、
サソリの精神を、自分のものにすること。
1949年カルロ・アバルトの工房から、75年。
「小さくとも、力強く」を貫いてきたサソリの伝説は、
EV時代になっても、変わらず世界を魅了し続ける。
よくある質問
- Abarth 595(標準)約400万円台、Abarth 695(最高峰)約600万円台が目安。
Abarth 500e(EV)約500〜600万円。
中古市場では3年落ちで約300万円、5年落ち約200万円台が一般的です。
- Abarth 595は標準モデル145〜180PSで日常使いから走り好きまで広範囲、Abarth 695は最高峰モデル180〜193PS。
Sabelt製レーシングシート、Brembo製赤キャリパー、Record Monza排気など装備が大幅強化されています。
- WLTP値で約260km。バッテリー42kWh、154PS、0-100km/h 7秒。
最大の特徴は「Sound Generator」で、アバルトのスポーティな排気音を電子的に再現。EVになっても「アバルトらしさ」を失わない設計です。
- 新車販売は2019年に終了済み。現在は中古市場のみで、価格は走行距離・状態により200〜400万円台。
マツダ・ロードスターベースのため希少価値があり、プレミアがついた個体も多数。
- イタリアン・ラグジュアリー感のSandii GALETTE(11色)、ヴィンテージ感のRefinad ヘリテージメッシュ(3色)、個性派のSandii KACHINA(6色)。
Abarth 595/695から124 Spiderまで車種別の専用設計で対応。




